syu ü e Roman

掃いて捨てるショートショート。

ドーリス

計算高いと言われれば確かにそうかもしれない。 彼女が歯を磨くリズムも、歯を磨いている時に歯磨き粉がついてしまった白いワンピースも、彼女が回した洗濯機の水が擦れる音も、気付くと僕が出すギターノイズに飲み込まれて行っていた。ディストーション、人…

公園

ラブホテル街のすぐ隣にある公園。 そこが僕の憩いの空間になった。静かな公園。その空間はある種、「感情」を孕んでいて、それでいて人を落ち着かせる何かがある様だった。 昼過ぎ、僕は自動販売機でエナジードリンクを買って、公園へ向かう為にラブホテル…

二十一歳の彼女はもう無い。

十七歳の時に開けた左耳のピアスの穴が二つとも塞がっている事に気が付いた。十年にも満たない、悠久の様にも感じれていた日々が、たった二つの穴が塞がっただけの事で、多少の変化を持って進んで行っている事を気付かせる。 僕の身体の細胞だけが死滅して再…

単純な駄文

‪心の血液を入れ替えないと、少しずつ、思うより早く身体は腐って‬行くので、僕は目を瞑って朝が来るのを待っている。どうしたら入れ替える事が出来るのか考えては時計を見たりした。 34度3分の熱病に浮かされる。目の前が大きくなったり小さくなったりして…

二十四時間は九十二日

初めから分かってたんだと思う。数十秒を数十分に感じてしまう程に倒錯してたから。 ✳︎✳︎✳︎ 「呼吸もしたくないし、瞬きもしたくない。だけど生きていたいなんて思ってしまうの」 彼女は、氷で薄くなったアイスコーヒーの様な色の木製テーブルに落とした白い…